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灰谷文学の是非を問う
−もとい 是是を問う−
99.4.23
あらら7年もほったらかした挙げ句の訃報なんてこったい(06.11.24)


はじめに

 灰谷健次郎ほどその作品に賞賛と批判が飛び交う作家というのも珍しい。
 一人の作家、というよりも一つの作品が多くの人の心を打つ一方で、同時に多くの批判にも晒されるというのはどういうことだろう。
 少なくとも灰谷文学が人を感動させる力を持ちながらも(その感動がホンモノであるかどうかはさておき)、同時に読み手に何がしかの疑問、不満、反発、あるいは誤解を抱かせる要素をも持っているのは確かなようだ。かく言う私自身も、灰谷文学に深く感動する一方で、無条件に支持しかねている読者のひとりである。
 灰谷作品に関する評論は数多くある。
 興味深いのは、それら(ごく短いコメントも含めて)の殆どが、共通のパターンを持っているという点だ。すなわち「こういう欠点はあるけれども」という条件付きの賞賛が大半であるという点。無論、それらの欠点を根拠に灰谷文学を全否定するかのような声も少なからずある。しかし私は、そういった批判の声に時に深く頷き、いくつかの作品には強い苛立ちを覚えつつも灰谷健次郎を支持し続けている。

 果たして灰谷健次郎は真に上質の作家なのか。それとも人気だけの食わせ物なのか。灰谷文学の数々の評論を取り上げるという形で検証して行きたい。検証する前から結論は決めているのだけれど。


※出典で「74.10」など年月を記しているものは全て
「日本児童文学」の号数を表しています。

 
− 目次(予定)−


  1. 「兎の眼」は傑作か
     灰谷健次郎の児童文学第1作を検証。
     − 序 −
     (1)賞賛
     (2)条件付き賞賛
     (3)批判あるいは全否定
     (4)各批判の妥当性
     (5)「兎の眼」は児童文学の古典となり得るか

  2. 清水真沙子「良心のいきつくところ」と
     神宮輝夫「現代児童文学作家対談7」
     灰谷文学を高く評価しながらも、同時に厳しく批判する清水真沙子の評論と、灰谷文学に極めて好意的な神宮輝夫(と灰谷健次郎)の対談。両者の灰谷評の比較を交えて灰谷文学の欠点を検証。
    (長らく執筆中)

  3. 二元論の人間観
     ダメ人間を糾弾する。これはよくも悪くも灰谷文学とは切っても切れない要素である。
     灰谷文学の批判として最も槍玉に上がる「二元論の人間観」を検証。(相も変わらず執筆中)

  4. 寄せ集め(果てしなく執筆中)


参考文献(順不同)

上野瞭「『まがり角』の発想」(晶文社「われら時代のピーターパン」収載)
今江祥智「兎の眼、子どもの眼」(理論社「今江祥智の本 第21巻」収載)
今江祥智 新潮文庫「兎の眼」(灰谷健次郎)解説
河合隼雄「読むこと・書くこと」(理論社「想像力の冒険 わたしの創造作法」収載
                    今江祥智・上野瞭・灰谷健次郎責任編集)
清水真沙子「良心のいきつくところ」(大和書房「子どもの本の現在」収載)
ひこ・田中「『兎の眼』の眼」(ホームページ「児童文学書評」収載)
ひこ・田中「はるかなユートピア」(パロル舎「ぱろる9」収載)
今江祥智・上野瞭・灰谷健次郎「現代児童文学作家対談7」(偕成社)

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