1.「兎の眼」は傑作か

99.4.23

(5)「兎の眼」は児童文学の古典となり得るか

 この作品がいつまで通用し続けるかはわからないけど、児童文学の世界で果たした役割は大変なものです。


 99年2月にクレヨンハウスで行われた講演での今江祥智の言葉である。

「なり得るか」の問いに対し、この言葉から導き出される答えはノーだろう。

 今江はまた、文庫版「兎の眼」(新潮文庫)の解説においてこうも語っている。

『兎の眼』がどれほど養分をたっぷりもっていようと、すぐれた教師同様、成長する子どもの目から見ても、いずれは超えられるべき存在なのではあるまいか。そして誰よりも作品自身が次作によって、更に続く新しい作品によって超えられることを願えばこそ、清水さんたちも批判したのではあるまいか。『兎の眼』にちりばめられている剛直な笑いの精神が死なない限り、灰谷さんはいずれもっと骨太な、「喜劇的精悍さ(ウィス・コミカ)」にあふれた大作で、他ならぬ過去の自作をも粉砕してくれるものと、わたしは期待しているのである。

 そして最後に「兎の眼」をこう位置付けて結んでいる。

日本の子どもの本の地平と読者を拡げてくれたこの一作




「兎の眼」は傑作か −了−



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