細切れコラム5

アスタ・マーニャ 〜西葡混合の謎〜(2007.4.16)

2007年4月、銀座のライブハウスでアルベルトのソロライブがあった。30席限定で、間近でギター弾き語りが聴けるという贅沢なものだ。

休憩時間は客席を廻って談笑するアルベルト。こんな雰囲気の中で野暮かなあと思いつつ「つまんない話なんですけど」とおずおず話しかけると「ん〜つまんない話OKよ」。


「アスタ・マーニャ」というディアマンテス屈指の名曲がある。Hasta Manha――スペイン語をちょっと知っている人なら、おやっと思うはず。スペイン語に「manha」という単語はない。スペイン語「hasta(〜まで)」とポルトガル語「manha(朝)」が並べられているのである。これは一体どういうことかと以前オフィシャル掲示板で尋ねたことがあるが誰も答えてはくれなかった。それを作詞・作曲を手掛けた本人に直接聞いてみたというわけ。

果たしてアルベルトは実に丁寧に説明してくれた。

僕は各国の外国人労働者を知っている。ペルー人もいるしブラジル人もいる。けれども彼らの間には言葉の壁があるのはもちろん対抗心も根強い。あのメロディ(沖縄民謡が元らしい)はスペイン語"Hasta mañana"でははまらない。ところがポルトガル語とミックスした"Hasta manha"ならはまる。みんなにひとつになってほしいという願いを込めてあの歌詞にした。

ペルーにそんな方言でもあるのかな、などと思っていたが、そうではなかった。10年来のつかえがこれにて解消。

が、このことをブログに書いたら、<全国のアルベルトファンを敵に回したI氏>が新たな疑問の提示。

スペイン語 ポルトガル語
また hasta até
明日 mañana amanhã
mañana manha
また明日 Hasta mañana. Aaté amanhã.

曰く、ポルトガル語の「明日」は「amanhã(アマニャン)」で、「また明日」は「Até amanhã(アテ・アマニャン)」。つまり「Hasta manha」では「また明日」ではなく「また朝」という意味になってしまうと。右の表を参照されたい。ポルトガル語では「明日」と「朝」は別々の単語が充てられているのだ。

うお〜せっかく10年来の謎が解けたと思ったのに気になっちゃうじゃないか!!(そういえば、アルベルトの口から「アテ・アマニャン」という言葉が出てはいた。もしかしたら私が説明を聞き洩らしていたのかも。ひ〜すんまへん。)


アルベルトの説明にあった文節数の問題は、I氏も言っているように「アマニャン」でも解決できないことはない。こんな風に。
アースターマーニャーーーーーーー
アースタアマーニャーーーーーーン
(ついでに言えば「マニャーナ」は「アマニャン」と同じ3音節なので「Hasta mañana」でもはめるのが可能。)

それでもあえて「manha」を選んだのは、メロディに乗せた時の響きが一番美しいと思ったから、なのかな。「アマーニャ〜ン」じゃ猫みたいだもんね。この謎は墓場まで持って行くことになるかも。ははは。

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