6月21日。8時起床。
念願のホテルの朝食。ど〜んなメニューかな〜。
パンとジュース。
いいんだよ、朝は軽くて。
マダムとの対面に備えて朝シャンを済ませておく(絶対ウソ)。
9時30分チェックアウト。
札幌駅のコインロッカーに荷物を預けて、待ち合わせ場所の赤れんが庁舎へ。
入り口付近にそれらしい姿はない。9時45分。約束の時間まで15分ある。建物の中を見て回る。「旧本庁舎」というから今はただの展示場かと思えばそうでもないらしく、会議だなんだと業務放送が時折入る。
一階を回り終えて二階へ上ったところで携帯電話が鳴った。
マダム──マダムなのですか。
今着いたところだという。入口へ向かうと告げて切る。
6段飛ばしで一階に降りる。──いない。マダム!マダムはどこに!?
外へ出てみる。
と、階段下からこちらを見上げる女性の姿。
マダム──マダムなのですか。
待て、油断するな。罠かも知れない。
マダムに電話を掛けてみる。呼び出しが掛かるまでの時間が長い。
階段の上と下で無言で向かい合うぼくと女性。
やおら女性がバッグに手を掛けた。ピストル?!
違う。取り出されたのは、液晶の点滅する携帯電話。
ぼくは電話を切り、ゆっくりと階段を降りて行った。
女性の前に立ち、俯いてクククッと笑う。
彼女がぼくのおでこを指先でツンと突いた。
9時55分 札幌のマダムと対面。
再び赤れんが庁舎に入り、二階を見て回った。きたならしい椅子が展示してあったこと以外はよく憶えていない。だってマダムと一緒なんだもの。
10分後にぼくたちは外へ出た。行き先はマダムにまかせることになっていた。
―どこへ連れてってくれるの?
―植物園なんてどうかしら。
一昨日の札幌観光のときは、わざと植物園に行かなかった。
ぼくはちゃんと知っていたから。今日の行き先が植物園だということを。
だってマダムだもの。
現本庁舎