「コロボックルには会えましたか?」
そんなロマンチックな会話をしつつ、よく晴れた札幌の空の下を私達は歩いていた。
輝くような被写体の数々を前に次々とシャッターを押す私の姿に、マダムはそっと微笑んでいた。その笑みが心なしか引きつっていたなんてことはないないないってば。
マダムと見た青々とした生命
これで殺れる
マダムと見た可憐な花
枯れかけたアヤメ with ゴムホース
マダムと見た小鳥
ハシボソガラス
マダムと見た白花
花はどこに
水芭蕉の前にたたずむマダム
他にもマダムを撮った写真が36枚ほどあり、いずれ「植物園とマダム」と題し写真集を出版する予定だ。バラ園のバラがつぼみのままで、「バラとマダム」を撮ることができなかったのは唯一の心残り。
なんだよ、楽しいじゃないかよ。北大植物園最高だよ。なんてったってトリカブトが見られたんだもの。私はこれが見たくてはるばる横浜から来たんだよ!
というわけではなくて、ただの雑草にしか見えない植物がもっともらしい立て札で紹介されていたり正真正銘雑草だらけで肝心の草がどれだかわからなかったり温室が汚らしくて殺風景だったりするのをマダムと突っ込みを入れつつ歩くのがまことに楽しい。
場所が北大植物園だろうと上野動物園だろうと鎌倉霊園だろうと、きっとそれは同じことで、ものをただ見て回るのを楽しむ素養が私には欠けているのだろう。わざわざ大枚はたいてひとりで外国旅行をする人の気持ちがまるで理解できずにいる。
観光を楽しむには「慣れ」も必要なのかも知れないなとも思う。楽しむコツというものを、多分殆どの人は意識するまでもなく身に付けている。私は家に年寄りがいたのと、咬癖のある犬を飼っていたのとで、泊りがけの家族旅行をしたことがない。たまに家族で出掛けることはあっても、乗り物に酔った記憶しかない。わざわざ遠くに出掛けようという発想がそもそもないわけだ。(だから車がほしいと思ったこともなく、幸か不幸か運転も殆どできない。免許は持っているけれど。)
これから時々各地に観光に行ってみようか。そしていかに楽しめなかったかをブログに綴る。
題して「ぶらり陰鬱ひとり旅」。
やりません。