1.「兎の眼」は傑作か
99.4.23
− 序 − 灰谷作品の中で最も読まれているのは「兎の眼」であり、最も多くの批判に晒されているのも「兎の眼」であろう。既に作者自身が「欠点の多い作品」と明言し、その後いくつもの作品を書いている以上、「兎の眼」だけで灰谷文学を論じるのは乱暴すぎるというもの。 |
一年生の担任である二十二歳のこの先生は、第一日目からはげしい衝撃を受ける。教室に足を踏みいれるなり、まっぷたつに引きさかれた蛙、赤い花のようにとびだした内臓、それを取りかこむ形でにらみあっている子どもたちを見てしまうからである。理由を問いただす気持の余裕などない。小谷先生は職員室に駆けもどると嘔吐する。「『まがり角』の発想」(上野瞭) |
こうした極めてショッキングな場面に始まるこの物語。 |